愛犬は「怒らず」に「叱る」べき

子供の教育でも言われることですが、犬のしつけも同じく、「怒らず」に「叱る」ということを意識するべきです。
この二つは同義だと思われることも多いようですが、大きな違いがあります。
「怒る」というのは自己の感情の表現であり、単純に感情を相手にぶつけることです。
一方、「叱る」というのは、相手の望ましくない言動を注意して、よい方向に持っていくことを言います。

このように、両者では行動表現が変わってきますが、犬には言葉が通じないため、間違った行動を教えることは困難です。
よって、叱る前にどのような行動をしてほしいのかを考える必要があります。
また、「叱る」のは「相手の望ましくない言動を注意して、よい方向に持っていくこと」と上述しましたが、犬自身はよいことや悪いことといった概念を持ち合わせていません。
脳には、「大脳新皮質」という知性をコントロールする部位があります。
その大脳新皮質の中の「前頭葉」という部位が、物事の善悪を判断しています。

人間は前頭葉がとても発達しており、大脳新皮質の30%を占めているのですが、犬は7%程度しかないので、高度な善悪の判断ができないのです。
よって、犬は「楽しいこと」や「嬉しいこと」をよいことと認識し、「不安なこと」や「怖いこと」を悪いことと認識しています。
犬が叱られてよくない行動をやめるのは、飼い主を恐怖しているからです。

例として、犬がカーペットの上などで粗相をしてしまったら、つい叱りたくなるでしょう。
ですが、上述のように犬にとっては悪いことだと思えないので、そこで叱ると恐怖心を抱かせるだけになってしまいます。
ですから、トイレのしつけをする際は、トイレトレーのある場所で行うように持っていくことが大切です。

また、以前は「叩く」などの叱り方が効果があるとされていましたが、昨今の研究により、そのようなやり方は却って問題が悪化するということが分かってきています。
どうしても叱らなければいけない場合は、自分で判断せず、まず専門家に相談したほうがよいでしょう。